【人類と乳酸発酵】

当店で販売中の「白しば漬」
大原で作られる赤紫蘇ではなく、普通の紫蘇で作ります。
材料は大原のしば漬けが茄子なのに対して、こちらは胡瓜です。
別にこの辺に厳格な決まり事とかないので、茄子と胡瓜入れてもいいんですけども。
さて、人類は冷蔵庫の無い世界にずっと生きてきました。
今では当たり前になった冷蔵庫ですが、発酵食品作ってる人間は冷蔵庫無くても食べ物を腐らせずに保存できる術を持っています。
なので、今電気が全く無くなっても私は野菜を保存できる術を持ってます。
ただ、この技術は昔の日本だけでなく、世界中の人間は持ってました。
ドイツではキャベツを発酵させたザワークラウトが有名ですが、世界各地にそういった物があります。
乳酸発酵とは乳酸菌を主に増やした食品ですが、乳酸菌だけが繁殖する訳ではありません。
むしろ、そんな事は通常不可能に近いです。
現代の無菌室的な工場や、極めて厳格に管理された一部の工場だけで作れます。
ですから、普通に作ると乳酸菌が主ですが他にも色んな菌が繁殖した状態の食品になります。
これが味の複雑さを演出する訳で、作り手の腕の見せ所でもあります。
加えて、様々な菌を摂取するわけですから、腸内では複雑な反応がある事でしょう。
研究においては単一菌が体内に入ってどうか?というのは行われていますが、これは単純にその方が結果が出しやすいから、と言えます。
色んなバランスの菌を摂取してどうか?となると、これはエビデンスとして提示するのが大変難しいからです。
ですが、人類は基本的に単一菌を大量に摂取するのではなく、様々な菌が混在する発酵食品を摂取してきました。
単一発酵を否定する気はないですが、本来はそうだった、と言う事です。
さて、そんな元来の発酵食品を極めて忠実に作っているのが当店の白しばです。
漬けた後は流通させるためのボイル処理もしません。
菌が生きている状態で流通させますと、漬物は水分があるので密封容器が普通です。
そこで菌が動きますと何らかのガスが発生して膨れてきます。
ですから、ボイルで殺菌処理する訳で、それが悪いわけでもなんでもありません。
しないと破裂の恐れがあるので。
当店は、作り手である私が責任を持って状態を管理しております。
ですから、ボイル処理しないまま、生の状態でのお渡しになります。
この漬物は冷蔵庫不要の保存食ですが、本来は小分けにしてパッケージなどしません。
桶から必要な分取り出して食べていました。
ですから、小分けにして取り出したら風味の変化は始まっています。
この辺りが当時では無かった事ですが、最低この辺はしないとお客様の手に届ける事が難しいです。
ご購入の際は、封を開けられたら出来るだけ早く召し上がって頂くか、ビニール袋に移し替えてギューっと絞って開け口をしっかりゴムで縛るかしてください。
昔からの食材というのは、自然と共存する形での食品であり、人間の都合はそれほど考慮されていません。
ですから、人がその食材にある程度合わせる必要があります。
でないと、それらの食材の美味しさを保つ事は例え保存食でも難しいです。
長々と書きましたが、世界中で発酵食品がありますけれども、日本は特に四季を通して世界に無い多くの発酵食品、漬物があります。
是非、当店で当時の人が食べていた味を楽しんで頂けたらと思います。