井上漬物店の歴史
徳川家に仕えた先祖が伏見桃山を開墾
井上漬物店の先祖は、徳川家康公の九男である徳川義直公に仕える武家だったと伝わっています。義直公が生まれた京都伏見城(現在の清涼院)にご生母である亀殿の墓があり、それを偲んだ一団が伏見桃山に土着。今は途絶えた在来種の大根を、地名から「大亀山大根」と名付けて大いに生産。またそれを沢庵にして酒造などに卸していました。
幕末の鳥羽伏見の戦いでは、飛び交う鉄砲弾を避けながらも作業が続いたそうです。
初代吉兵衛が洛中に進出
幕末に生まれた吉兵衛が井上漬物店の初代店主です。
吉兵衛は大亀山大根の沢庵が詰まった大樽を大八車に積んで、伏見桃山から洛中へ売り出すように。これが成功し、明治の卸一新後には現在の地に移住。店舗を構えたと伝わっています。
呉服屋の賄い需要で大繁盛
明治期から昭和初期にかけて、井上漬物店の周囲には呉服屋をはじめ京友禅や西陣に関わる見せや職場が多くありました。そこで働く人々の賄い(食事)に、井上漬物店の香の物(漬物)はなくてはならない存在として愛されたのです。
「新しいもん好き」ならではの創意工夫
太平洋戦争で大きな痛手を受けた井上漬物店でしたが、代々の店主に見られる「新しいもん好き」の先取の気風は今も受け継がれ、伝統的な漬物の製法を守りながらも、時代に応じた漬物作りに積極的に取り組んできました。小さな商いだからこそできる、面白い漬物づくりが当店の精神。昔ながらの漬物を愛するお客さま、面白い漬物を求めるお客さまの両方に愛される当店は、これからも京都にて漬物の製法や美味しさを伝え続けます!